〜 店に使われている 木の話 〜
いらっしゃいませ
『喫茶 大工集団 欅』に来ていただくお客様からよく樹木についての質問がありますが、その中で私が困ってしまう質問があります。
白状します。
葉が青々と茂っている木の写真をお持ちになり「これは何の木ですか」と尋ねられるのには困ります。
と言いますのは、私は木を用いて建築をしている人間ですから、生きている木は苦手なのです。正直に言うと、伐採後、製材してある木でしたなら杢目を見たりして樹類は分かりますが、生きている木の葉や幹を見ても樹種は分かりません。
今後はご勘弁ください。

喫茶 大工集団欅(けやき)






良い家 造ります

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 (くり)   【Chestnut】

学名 【Castanea crenata】
Castanea は、ギリシャ語の castana(栗)からきた古代ラテン語です。
crenataは円鋸歯状のという意味があります。
葉っぱがギザギザなのです。

双子葉植物 離弁花類 ブナ科 クリ属
落葉高木、雌雄同株

分布は、日本では北海道(西南部)・本州・四国・九州まで広範囲にあります。
北海道南部の石狩と日高を結ぶ辺りが北限です。
北半球に広く分布しているようです。
ロシアのバイカル湖周辺には直材の巨樹が豊富にあります。
但し、材は黒いタモといった感じの木で、日本の栗とは違います。

栗についてはなんと言っても、《日本最強の木材》と言われている事を書かなければなりません。
非常に堅く、水にも強く、虫害にも強いからです。
ですから日本では最も古い栽培植物のひとつで、縄文時代の遺跡からも大量に出土しています。
他の木では腐り果てて跡形も無くなっていたでしょう。
栗は虫害や腐食に強いので、防腐・防虫処理がなかった時代には家屋の土台として重要視され直材の長物は常に不足気味でした。

用途は建築用材・家具・器具・船舶・薪炭等がありますが、最近では高級用材となりました。
建築には昔は土台に用いられていました。堅くて、湿気に強いからです。
最近は太い栗の木がなくなり、あってもお値段が高くて建築には用いることが極端に少なくなりました。

丹波から名栗という工法が作りだされました。
名栗工法の由来は天保年間、丹波北桑田弓削村在住の杣職人鵜子久兵衛が栗の木を削って作ったのが始まりで、六角の丸棒状にした栗材の表面を手斧で波形に削って作った柱の形状が評判良く、殴って削った工法とのゴロ合わせ感覚も良くナグリと呼ばれるようになりました。
用途は天井棹縁、格子、床柱、柵欄干、洋間の見切りなどに使われ、太さも5分丸から4.5寸まであります。
芯持材に名栗加工をすると、木目が波の様に出て面白い模様になるので、変わった感覚のデザインが楽しめ京都祇園の情緒を醸し出すには不可欠な物といわれています。
そうそう、栗は関東の秩父名栗村からも良い物が供給されています。

栗の実は食糧にもなりますよね。
皆さんは栗ご飯はお好きですか。
モンブランケーキもお好きですか。

秋になるとスーパーや八百屋の店頭で栗が並んでいるのが目につきますよね。
正月のお節料理にも栗金団はつきものですし、栗ご飯、栗羊羹、甘栗など、日本人にとって欠かせない食物の一つとなっていますよね。
栗は、日本中の至る所に野生し、人ばかりでなく、山の動物たちにとっても重要な食料源となっています。
実は小さいながらも、たくさん集めれば、主食の代用になることから、昔から大いに利用されてきた食物です。
かつて栗の実は非常食としても使われたことがあるらしく、戦時中には貴重な食料となっていたようです。
兵庫県の丹波篠山からは、良質の栗が産出されます。
カチグリは栗の実を乾燥させて作る保存食品で戦国時代の戦場非常食として重要視されました。
実の成分は澱粉や糖分が詰まっており、穀物類に相当するほどの栄養価値があります。
クリ属はコナラ属と違って、果実は一般に「いが」と呼ばれるものに包まれていて、だいたい1個から3個ほどの実が入っています。
日本産の栗は、シバグリともいい、山野にきわめて普通にある、落葉高木です。
花は6月ごろに咲き、虫媒花の木です。

余談ですが、クリの名前の由来は、黒実からきたと言われています。

ひとくちに栗の実といっても、大きさはいろいろあります。
例えば、シバグリは野生の小さな栗で、丹波栗は栽培される大きなクリです。
すでに平安時代の「延喜式(三代格式の一つで、宮中のことをまとめたもの)」に丹波(今の京都府と兵庫県の中央部)に大きくて良い栗の実の品種があると記録されています。




『行く秋や 手をひろげたる 栗のいが』 (芭蕉作)



← 栗の板目

当店では栗を大黒柱・床板・キッチンの框等に用いました。
← 店内の栗の大黒柱

太さが8寸(24p)あります。
桜のところにも書きましたが、広葉樹は真っ直ぐな材は少なく貴重です。
この栗の大黒柱の長さは元々は4m50pありました。
勿体なかったのですが、3m15pに切って使いました。

それでも、これだけ真っ直ぐな栗材は珍しいでしょう。
← 当店の床

(これはやはり栗でした)

ここで、どなたかにご教授を賜りたい木があります。

それは当店の入口横にあるテーブルの天板に用いている木(左の写真)の名前が分からないのです。
この天板は以前に或お宅で床の間の床板として使われていたものです。
栗のようですがこんなに大きな栗は無いでしょう。
どなたかお判りの方はお教え下さい。
← これは当店の庭にある栗の根・・・。
ではありません。
ナント、栗の枝なのです。
枝が輪っかになっており、何かに使えそうで製材はしませんでした。
幹の太さは1m以上もあった大木の栗でした。
今はジン(中心の堅い部分)だけにするために野ざらしにして表面を腐らせています。
でも流石栗ですね。
10年以上も置いてあるのにほんのわずかしか腐っていません。